オフィスセクターの再考 時代に見合った資産への最適化

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ASIA PACIFIC

オフィスセクターの再考 時代に見合った資産への最適化

GLOBAL THOUGHT LEADERSHIP SERIES

RETHINKING THE OFFICE SECTOR

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主な調査結果

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レポートの概要:欧州版・米国版

米国

欧州

• 2030 年までにトップグレードオフィス( 4,800 万平米)のうち、 2,000 万 平米が余剰スペース化 • 76% のオフィスが陳腐化するリスクを抱える。主な理由として: • EPBD (建物エネルギー性能に関する指令)により低炭素ビルの 開発が一般化 • アイルランドやドイツにおける炭素税の賦課 • 透明性: SFDR (持続可能なファイナンス規制)に基づき必要と される開示は、不動産価格に影響 • 今後はビルを賃貸する前にオフィスビルの最低エネルギー性能基準 (英国とオランダ以外では EPBD など)の遵守が前提とされる 詳細は下記 URL 参照: https://www.cushmanwakefield.com/en/united kingdom/insights/obsolescence-to-opportunity-emea

• 2030 年には余分なオフィススペースが約 100 万平米生じる • 25% のオフィスが陳腐化しており、 61% が今後陳腐化するリスクを抱え る。主な理由として: • 従業員一人当たりのデスクスペースは 17.6 平米から 15.3 平米に 約 13 %程度 削減される見通し • 全体の 3 分の 2 を占める賃貸契約が更改期限を迎える • オフィス・ワーカー数の増加が予測されているものの、 オフィス床需要 は現在とほぼ変わらない規模 4.2 億平米とどまる見通し • オフィス需要の減退に伴う賃料への影響は グレード別に多極化 して いく見通し 詳細は下記 URL 参照: https://www.cushmanwakefield.com/ja jp/japan/insights/obsolescence-equals-opportunity

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レポートの概要 : アジア太平洋版

概要

• 主要市場のオフィスストックの約 50 %がセカンダリーグレード • 約 50 %の優良ストックのうち、サステナビリティ認証を取得しているのはわずか 43 %。つまり、プライム グレードでサステナビリティ認証を取得しているのは 28% に過ぎず、残りの 72 % は何らかの形の対応 を行わなければ時代遅れとなる可能性 • 2025 年の地域全体の空室率は約 18 %(空室面積は約 3,620 万平米)を超える見通し。しか し、好立地オフィスに対する需要は堅調であり、想定されるよりも陳腐化のリスクは低い • プライムストックの加重平均築年数の中央値は約 16 年、全体に占めるプライムストックの割合は都 市により異なる • 陳腐化のリスクは相対的に評価されるべきでありであり、資産ごと及びマーケットごとに評価は異なる - 中国、インドなど新興国のプライム・オフィスは比較的築浅だが、サステナビリティ認証を取得してい ないことが多々ある。また、中心地を外れるとセカンダリ―・グレード以下の物件が多く存在し、陳 腐化が顕著となる傾向。 - オーストラリア、日本、シンガポールなどの成熟した市場ではサステナビリティ対応が比較的進んでい るが、規制強化に伴い、ビルオーナーは更なる改修の圧力に晒されつつある。また、今後の市場拡 大は見込みがたいため、優良テナント確保に向けた競争が激化する傾向。

APAC * に所在するオ フィスのうち、セカンダ リー・グレードの物件

APAC * に所在するプライム・ オフィスのうち、サステナビリ ティ認証を受けていない物件

* 分析対象は以下の 10 都市:北京、ベンガルール、デリー、香港、メルボルン、ムンバイ、上海、シンガポール、シドニー、東京 出所:クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド

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(1)オフィス需要の見通し:予想以上に堅調な回復

• 2030 年までに予測されるアジア太平洋地域全体で 1,500 万のオフィスワーカーの増加は、中国(新規雇用のうち 740 万件を占める)、 インド、フィリピンに帰属するもの • オフィス回帰に伴う出社率は、欧米より高い。中華圏における出社はほぼ義務化、在宅勤務の混在する東京全体では概ね 85 %程度で 推移  欧米と比較すればオフィスセクターに対する逆風は緩和されている

都市別オフィス出社率の動向(推定値) 2019 年以降

2022 年から 2030 年までのオフィス勤務者の増加率予測(百万人)

出所:Kastle Systems, Property Council of Australia,クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド

出所:Moody’s Analytics

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(2)オフィス最適化の必要性:都市別に大幅に異なる サステナビリティ認証を受けているプライム物件の割合

• サステナビリティ評価を受けたプライムストックの割 合は、成熟市場であるシドニー、シンガポール、メ ルボルンの 90 %以上から、新興市場である北京、 ベンガルールの 40 %未満まで異なる • 新興市場である中国とインドは、欧米同様の国 際的基準(主には LEED 認証)を採用する傾 向。しかし、その他の国では、環境認証の主流と なる基準が国別で異なることにも留意する。 • 日本: DBJ グリーンビルディング認証、CASBEE • オーストラリア: NABERS • シンガポール:BCA Green Mark • 香港 : BEAM Plus

出所:クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド

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(3)都市別の総合評価

Grade A 以上の物件

2022 年から 2030 年までの オフィス勤務者の 増加率

プライムオフィス の割合

所有者に占める 機関投資家の割合

サステナビリティ格付 保有物件の割合

築年数の中央値

• NOI (営業収益)を最適化する手法におい て、地域全体で適用できる画一的な手法は 存在しない。 • 都市別に異なるオフィス市場の構造、需給要 因、規制などに加え、ビルのクオリティも最適化 のために必要とされるアプローチや明確な成果 の達成に大きな影響を及ぼす。 • 右図の主要な都市別の総合評価は「相対的 な評価」を示したものである。例えば、シンガ ポールにおけるサステナビリティの遵守基準は最 高水準に近い。しかし、規制強化に対応する ためビルオーナーはさらなる努力が求められてい る。 • 個別物件はそれぞれの品質に応じて評価を 行ったうえで、それぞれのライフサイクルに見合っ た資産の最適化計画を推進すべきである。

リスク高 / 最適化必要性高

リスク低 / 最適化必要性低

出所:クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド

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(4)都市別の概況 上海 • 大量の新規供給

シドニー • 空室率は高まっている、グレード間の格差は継続 • 約 60 万平米のオフィス・スペースが陳腐化するリスク、プ ライム・オフィス間の競争は高まる シンガポール • 80-80-80* • 建築建設局のグリーン・マークプレミアム基準への対応 東京 • 都心部を中心に築古のビルが多い • セカンダリー・グレードの物件は相対的に多い • 包括的な管理基準は存在するものの、遵守は任意 *2030 年までに延床面積基準で 80% の物件が環境認証を取得し、 2030 年以降の新築物件の延床 面積 80% が超低燃費物件となり、 2030 年までに高い環境基準を満たす物件で 2005 年と比較して 80% 以上のエネルギー効率化を達成するという、シンガポール建築建設局の政策目標 出所:クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド

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• 賃貸借契約期間は短期 • セカンダリー・グレードの割合は高い

香港 • サステナビリティ認証の取得率は低い • 空室率は高止まり ムンバイ • 築浅のビルが多いものの、都心の平均築 年数に限れば、 45 年に達する • 約 13% の物件がテナントが求める品質を 満たしていない可能性

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築古の中小型ビルが多いため、バリューアッド投資家の参入余地は大きい 東京

オフィスビルの平均築年数がほぼ 33 年近いことを鑑みれば、陳腐化に伴うリニューアルは不可欠の投資テーマに 概ねのオフィスビルの耐用年数が約 45 年 1 であることを鑑みても、築 40 年超のオフィスビル(以下、築古ビル)は妥当な再開発の対象といえるだろう。東 京のセカンダリー・グレードのオフィス市場だけみても、約 864 万平米のストックが存在し、多くの物件が大規模改修を必要としていくことが見こまれる。重要 なのは、築古ビルの多くが必ずしも陳腐化しているとはいえないことである。そもそも築古ビルの多くは立地条件に優れている。また、日本のビル・メンテナン スに関する基準(任意)は包括的で高水準であるため、築年は経過していても、世界的にみても行き届いた整備がなされている傾向にある。

Vacancy % INCREASE Availability % INCREASE

0.0% 2.0% 4.0% 6.0% 8.0% 10.0%

8.3%

6.4%

3.7% 3.1%

課題 • 日本では、一般的な基準の遵守が任意とされているため、サステナビ リティ認証などを取得するビル・オーナーの属性についても、 J-REIT ・ 私募ファンドなどの外部の投資家に対する説明義務を有するプレイ ヤーが主体となっている。 • 築古ビルは、立地条件に優れていても、必要な改修を行う投資余力 がない個人・事業会社オーナーが保有している場合も多い。今後は バブル期に建築された多くのビルにも改修が必要とされてくる。 • 築年数別にコロナ禍以降の需要動向をみると、築30 年以上 40 年 未満のセグメントにおける賃料、空室率の落ち込みが最大であった。 なお、同実質賃料の年平均増減率はマイナス 8.2% に達する。 • さらには地方都市においては、築 40 年を超えるビルの比率は東京以 上に高まる。例えば、同比率は、東京ではほぼ2割であるが、大阪で 29% 、福岡・札幌ではで 35 %近辺まで上昇する。

解決方法 • 日本では、ビル・オーナーやデベロッパーは、大規模修繕の際に省エネ ルギーを実現する計画書の提出が求められている。言い換えれば、サ ステナビリティ認証は資産を最適化する計画を構成することにもなる。 • ビル別のパフォーマンス乖離も拡大傾向。2割を超す空室率が長期 化するビルの比率も上昇がみこまれ、早急な陳腐化対策が必要に。 • 建築費高騰が見込まれる中、追加投資に見合った経済価値が存在 しているかどうかは、一般的にオフィス賃料に対する賃料プレミアム (品質調整後)の推計値により判断されることになる。総じて、一般 的に規模が小さいビルの方が賃料プレミアムは上昇する 2 。例えば、 先行研究では環境認証取得による賃料に対するプレミアムは、新築 竣工ビルでは測定不可能な範囲であるものの、既存ビルであれば大 規模で 2.6% 、中規模で 5.4% まで拡大することが示されている。

10 years <

20 years <

30 years <

40 years <

1 国税庁、減価償却計算に基づく( 2023 ) 2 内閣府、経済社会総合研究所「不動産市場のグリーン価値~リニューアルを考慮した東京オフィスビルのグリーン・プレミアムの推定」 (2022) 3 中小ビルは延床 5,000 坪未満と定義

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資産に合ったライフサイクルを再考する

資産別にライフサイクルを適正化するステップ

 現状評価  目標を設定  外部の認証取得

 再評価する  鑑定する  売却する

保有ビルが市場需要を喚起できるかは、ビル・オーナー が将来的に必要とされる追加投資に、現段階から十分 な予算を配分するかどうかの意欲や能力により試される こととなる 1. 明確なヴィジョンを通じて資産価値を創出する ( GROW ) 2. 環境認証などによるサステイナビリティの実現 ( GREEN ) 3. アセットマネジメントによるガバナンス強化 ( GOVERN ) 4. 追加投資によるグレードの維持・向上 ( GRADE )

GROW

GREEN

GOVERN

GRADE

 技術的な デューデリ ジェンス  修繕計画  コンプライアンス

 保全の措置  規制環境  テナント・ミックス

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O u r R o a d M a p

1 ASEESS ( 評価)

2 Analyse ( 分析)

3 Action ( 実行 )

自らが保有する物件で陳腐化リスクが高い 物件を正確に洗い出していく 対象物件の実績をベンチマーク指標と比 較し、査定を徹底する

ESG及び資産管理に対する監査を行う

弊社では下記サービスを包括的に提供し、ともに 保有資産の最適化を推進させていきます : • プロジェクト策定・遂行管理 • プロパティ・マネジメント • 鑑定評価 • サステナビリティ認証及び / または取得支援 • 新しいテクノロジーのご紹介 • 保有資産の再配置・追加投資の支援 • 保有資産の売却支援

物件の品質評価をする

アップグレードするためのシナリオを定義する

改修すべき重要個所を特定する

物件の品質評価に与える影響を洗い出す

更なる分析が必要とされるシナリオを事前 に定義しておく

賃料収入及び投資収益をモデル化する

財務分析を行う

BEGIN YOUR RETHINKING JOURNEY

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オフィス再活用の事例のご紹介 用途転換の選択肢: 共同住宅、トランク・ルーム、ホテルなどを含む複合用途により利便性を高める

高層オフィスを 病院が入居するオフィスへ 総予算 1,000 万ドルで、シカゴを象徴 するHancock Towerの 4 フロアを手 術センターや他の医療機関として使え る複合用途に大きく転換した。 他のフロアにおいて新規テナント募集 中であるが、引き合いは大幅に増加し ている。

郊外オフィスの余剰地を活用 既存のオフィスビルに隣接する余剰地に 500 戸の共同住宅を建設する。同時に、 既存のオフィスビルの一部を、住民向けト ランクルームに用途転換する予定。 余剰スペース活用により、複合用途化を 加速化させる。

高層複合施設へ 1 億 7 百万ドルの貸倒によって売りに出て いた 13 万平米のオフィスを 2022 年4月 に 450 万ドルで取得後、共同住宅とホテ ルに用途転換予定。一部は面積を縮小 してオフィスのまま使用される予定。 ワークプレイス戦略の浸透により複合施設 のオフィスフロアの魅力が高まった。

クリエイティブな複合施設へ 既存の駐車施設の屋上を有効活用し、 郊外のオフィスを大規模複合施設に再開 発。 対象物件が人気の Live-work-play エリ ア(職住近接)に隣接する立地条件を 最大限活用した。

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弊社事例のご紹介 バリューアッド戦略:最新型オフィスに求められるスペックとは?

集中するためのエリア( 30-40% )

フロント・オブ・ザ・ハウスエリア;コラボレーションを目的としたワー クポイント。訪問者の第一印象を決定する重要なスペース

作業ゾーン;作業机等は 100% 高さ調節可能、机等の移動と 画面共有を可能にするため、単芯ケーブルが備えられている

集中スペース;机に座り集中して業務を行う、会話厳禁の仕切 られたスペース

コラボレーション・エリア( 50% )

メディア・ラウンジ:様々なメディアを活用した打ち合わせに使え るコラボレーションスペース

カフェ;交流、外出前後の短時間の作業、出入り自由の協業 または軽食に使える多目的スペース

コラボレーションスペース;囲まれていたり、仕切りがなかったり、 様々な種類のコラボレーションスペースが全体の 50% を占める

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お問い合わせ:

Nobuhiro Maruyama ・ 丸山 展弘 Head of Investment Sales Japan nobuhiro.maruyama@cushwake.com

Todd Olson Managing Director, Japan & Korea todd.olson@ap.cushwake.com

Yasushi Otomo ・ 大友 泰 Head of Project & Development Services Japan yasushi.otomo@cushwake.com

Mari Kumagai ・ 熊谷 真理 Head of Research & Consulting Japan mari.kumagai@cushwake.com

RETHINKING THE OFFICE SECTOR クッシュマン・アンド・ウェイクフィールドについて クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド(C&W)はニューヨーク取引証券所に上場している世界有数の事業用不動産サービス会社で す。世界約 60 カ国、 400 拠点に約 52,000 人の従業員を擁しています。施設管理、売買仲介、鑑定評価、テナントレップ、リーシン グ、プロジェクト・マネジメントなどのコア・サービス全体で、 2022 年の売上高は 101 億ドルを記録しました。受賞歴のある企業文化や、 ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン( DEI )、環境、社会、ガバナンス(ESG)へのコミットメントにより、業界内外から高い 評価を頂いております。詳しくは、公式ホームページ www.cushmanwakefield.com/ にアクセスするか公式ツイッター @Cushwake をフォロー下さい。 ABOUT CUSHMAN & WAKEFIELD

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