オフィスセクターの再考 時代に見合った資産への最適化

築古の中小型ビルが多いため、バリューアッド投資家の参入余地は大きい 東京

オフィスビルの平均築年数がほぼ 33 年近いことを鑑みれば、陳腐化に伴うリニューアルは不可欠の投資テーマに 概ねのオフィスビルの耐用年数が約 45 年 1 であることを鑑みても、築 40 年超のオフィスビル(以下、築古ビル)は妥当な再開発の対象といえるだろう。東 京のセカンダリー・グレードのオフィス市場だけみても、約 864 万平米のストックが存在し、多くの物件が大規模改修を必要としていくことが見こまれる。重要 なのは、築古ビルの多くが必ずしも陳腐化しているとはいえないことである。そもそも築古ビルの多くは立地条件に優れている。また、日本のビル・メンテナン スに関する基準(任意)は包括的で高水準であるため、築年は経過していても、世界的にみても行き届いた整備がなされている傾向にある。

Vacancy % INCREASE Availability % INCREASE

0.0% 2.0% 4.0% 6.0% 8.0% 10.0%

8.3%

6.4%

3.7% 3.1%

課題 • 日本では、一般的な基準の遵守が任意とされているため、サステナビ リティ認証などを取得するビル・オーナーの属性についても、 J-REIT ・ 私募ファンドなどの外部の投資家に対する説明義務を有するプレイ ヤーが主体となっている。 • 築古ビルは、立地条件に優れていても、必要な改修を行う投資余力 がない個人・事業会社オーナーが保有している場合も多い。今後は バブル期に建築された多くのビルにも改修が必要とされてくる。 • 築年数別にコロナ禍以降の需要動向をみると、築30 年以上 40 年 未満のセグメントにおける賃料、空室率の落ち込みが最大であった。 なお、同実質賃料の年平均増減率はマイナス 8.2% に達する。 • さらには地方都市においては、築 40 年を超えるビルの比率は東京以 上に高まる。例えば、同比率は、東京ではほぼ2割であるが、大阪で 29% 、福岡・札幌ではで 35 %近辺まで上昇する。

解決方法 • 日本では、ビル・オーナーやデベロッパーは、大規模修繕の際に省エネ ルギーを実現する計画書の提出が求められている。言い換えれば、サ ステナビリティ認証は資産を最適化する計画を構成することにもなる。 • ビル別のパフォーマンス乖離も拡大傾向。2割を超す空室率が長期 化するビルの比率も上昇がみこまれ、早急な陳腐化対策が必要に。 • 建築費高騰が見込まれる中、追加投資に見合った経済価値が存在 しているかどうかは、一般的にオフィス賃料に対する賃料プレミアム (品質調整後)の推計値により判断されることになる。総じて、一般 的に規模が小さいビルの方が賃料プレミアムは上昇する 2 。例えば、 先行研究では環境認証取得による賃料に対するプレミアムは、新築 竣工ビルでは測定不可能な範囲であるものの、既存ビルであれば大 規模で 2.6% 、中規模で 5.4% まで拡大することが示されている。

10 years <

20 years <

30 years <

40 years <

1 国税庁、減価償却計算に基づく( 2023 ) 2 内閣府、経済社会総合研究所「不動産市場のグリーン価値~リニューアルを考慮した東京オフィスビルのグリーン・プレミアムの推定」 (2022) 3 中小ビルは延床 5,000 坪未満と定義

RETHINKING THE OFFICE SECTOR

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